「私は忙しい⁉」 (佐野書記)

「私は忙しい⁉」

 最近、私の表情が厳しい。鏡を見るたびにそう感じる。微笑みが少ない。人間はストレスにさらされると笑わなくなるという。

 私のストレスは、何かというと「忙しい」ということかもしれない。ここ最近の私は、睡眠時間を二時間(十時間から八時間に)削って、様々な活動を行っている。実際に忙しいかどうかは別にして、忙しがっている人は世の中にたくさんいる。挨拶にも「忙しい」という言葉は、よく登場する。

「最近、どう?忙しい?」

 誰もが何度も経験した問い掛けではないだろうか?この問い掛けに対する模範解答は、「まあまあ」、「そこそこ」、「ぼちぼち」という極めて曖昧なものである。よく考えると意味の分からない挨拶である。私たちは、「忙しい」ことに美徳を感じ、「暇」に罪悪感を覚える。また、「忙しい?」という問い掛けに正直に「忙しい!」と答えると、相手にギョッとされることが多い。一方、「暇だ」と答えることも相手を戸惑わせてしまうことになる。「忙しい」と答えた場合は、その場のなりゆきで相手は「何が忙しいの?」と聞かなければならないし、「暇だ」と答えると「そんなことはないでしょう」と言われ、やはり面倒なことになる。したがって、波風立てずにやり過ごすためには、「まあまあ」、「そこそこ」、「ぼちぼち」という言葉が光り輝くのだ。

 ストレス、私の場合は「忙しい」ということが笑顔の敵である。子どもの頃の私は「いつもニコニコ晃孝ちゃん」だった。実際、幼少時のどの写真を見ても、白くふっくらとした左頬に大きなえくぼを作って微笑んでいる。子どもは皆可愛いが、私は極端かつ異常に可愛かった。しかし、恨むらくはそこが人生の絶頂であったことだ。

 世の中に伝染するものといえば、何だろうか?病気やあくびの他には、笑い、忙しさ、ではないだろうか。忙しそうにしている人に近付く人は、あまりいない。しかし、笑顔は笑顔を呼ぶ。赤ちゃんだって笑いかけると笑い返してくれる。

「笑う門にはサノ来たる」

 笑えば敵なしだ。忙しさ症候群に感染するよりも、同じ感染するなら笑う人に近付いた方が幸せに生きていける。実は、今回の宗務所執務帖の更新日は5月22日だった。しかし、怠惰な私は忙しさにかまかけて今日まで更新することができなかった。六波羅蜜の一つ「忍辱(にんにく)」は、寛容な心を持ち、ものごとにあたることだ。どうか言い訳するのに忙しい私を寛容な心で笑ってコラえて頂ければと切に願う。

                   (書記 佐野晃孝)

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