『スジャータの乳がゆ供養(釈尊伝Ⅰ)』~Buddhist Circuit Trainの旅~(堀江副所長)

『スジャータの乳がゆ供養(釈尊伝Ⅰ)』~Buddhist Circuit Trainの旅~

 約30年ぶりに北インドの釈尊の足跡を訪ねる仏跡を廻る旅を思い立ったのですが、現在でもインドの道路事情は全くインフラが進んでおらず、仏跡間の移動にはバスで数時間を要するのは覚悟の上でした。しかし、インドは鉄道王国であり全国に網の目の様に鉄道網が張りめぐらされており現在でもインドでは鉄道が重要な移動手段です。

たまたまインド国鉄(Indian Railways・略称IR)ではインドの首都ニューデリーを発着地として Buddhist Circuit Train(ブッディスト・サーキット・トレイン/仏教徒のための周遊列車)を運行している事を知り、インド・ニューデリー発(土曜日・2週間に1本)で北インドの仏跡(成道の地ガヤ(Gaya)・初転法輪の地サルナート(Sarnath)・釈尊誕生の地ルンビニ(Lumbini)(ネパール領)・釈尊涅槃の地クシナガラ(Kushinagar)をはじめ、ヒンドゥー教の聖地バラナシ(Varamasi)(旧ベナレス)やインド旅行では絶対外せないタージ・マハル(TajMahal)などを7泊8日(車中5泊・ホテル2泊)で廻る事にしました。しかし、日本へのプレゼンテーションが全くされておらず、日本国内の旅行代理店では手配が難しいとの事で結局現地のインド国鉄との直接交渉となりました。


     Buddhist Circuit Trainプレゼンテーション動画(YouTube)

  インド運行会社のHP
  https://www.irctcbuddhisttrain.com/    
   インド鉄道ケータリング・アンド・ツーリズム・コーポレーション(IRCTC)
 Indian Railway Catering and Tourism Corporation (IRCTC)
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ニューデリー(インディラ・ガンジー国際空港)到着ロビー

 さあー!いよいよ成田空港から約8時間でインド・ニューデリー(インディラ・ガンジー国際空港)です。列車は混雑するニューデリー駅を避けて南部のSafdarjung(サフダルジュング)駅からの出発です。ホームにはすでに12輌編成の列車が入線しており、定員150名の処今回の参加者は中国(広州)・シンガポール・タイ・インドなど54名との事で客室4人部屋の処を2人で使用する事になりました。インドの鉄道は広軌(新幹線よりも広い)の車輪幅で安定性は日本の鉄道を遙かに上回っています。まず最初の目的地インド東部のガヤ(Gaya)に向けて約1,050㎞を所要時間約18時間の列車の旅です。定刻14:30発に運行スタッフ約30名と共に7泊8日間の旅にスタートしました。ちなみに、このBuddhist Circuit Trainは7泊8日間ファーストクラスで、インド国内のすべての経費を含んで米$1,155(日本円約128,000円)でコテコテな豪華列車ではなく実用的なツアー列車です。

Buddhist Circuit Train・7泊8日で約2,500㎞を走る(ニューデリー・Safdarjung駅)

  ニューデリーからガヤまで約1,050㎞約18時間の旅

 時差の関係で知らぬ間に眠りにつき、翌朝モーニングティーのサービスで目覚めると間もなく30分早着でガヤに到着です。

 まず向かったのがガヤ郊外のスジャータ村でした。釈尊(本名シッダルタ)はシャーキヤ族の王子として何不自由の無い生活を送っていながら人生に対して大きな壁にぶつかっていました。人にとっての四苦(しく)と呼ばれる「生」・「老」・「病」・「死」の苦から救うのにはどうすればよいのかと悩み続けていました。ある時、カピラ城の東門から外へ出ると老人に会い、南門から出ると病人に会い、西門から出ると葬儀の列に出会い、北門から出ると出家者に出会い大きな感銘を受け、後にこの出来事は「四門出遊」という古事として伝わっています。そして、その答えを得ようとカピラ城を出て出家をし、生死の境を行き交うような激しい苦行を続けたのでしたが、その答えがどうしても見つける事なく体力は衰えるばかりで苦行のみでは悟りを得ることができないと知り、修行を一時中断し身体を清めるためやっとの思いで付近のナイランジャナー川(Nairanjanā、尼連禅河)で沐浴をしていると、近所のスジャータという女性が現れ苦行により痩せ細った釈尊を見て「乳がゆ」を供養したのでした。そして、乳がゆにより釈尊は心身ともに回復し心落ち着かせて、近隣の森の大きな菩提樹下に座して心静かに瞑想にふけりお悟りを開かれたのでした。本名シッダルタから悟りを開いた尊者(釈尊)となられたのです。釈尊がお悟りを開かれた事を成道(じょうどう)と呼び日本では臘月(ろうげつ・旧暦の12月)の8日に成道されたと伝えられ12月8日を成道会としてお釈迦様にとって大切な出来事(三仏忌又は三仏会)として法会が行われています。

   悠々と牛が休むスジャータ村の風景

スジャータの実家跡に建てられたと伝わるストゥーパ(仏塔)

スジャータの乳がゆ供養を表したモニュメント(スジャータ寺)

 当山では、苦修行後の痩せ細った姿では有りませんが、無精ひげを蓄えた悟りの瞬間を表した出山釈迦図を掲げてスジャータの供養した乳かゆに因んで赤飯かゆを食べて皆さんでお祝いするのが昔からの山風(さんぷう・各寺院での習わし)です。

お悟りを開かれた釈尊を表した『出山釈迦』図・風外書

      乳かゆに因んで小豆がゆをいただきます(当山の山風です)

 皆さんご存じのコーヒーフレッシュにある「スジャータ」とはこの乳かゆの供養から名付けられたそうです。
 一端ホテルに帰ってからランチを採った後、仏跡としてはメインの大菩薩寺(マハボディー寺院)へ出発します。次回から少しづつご案内をいたしますので、みなさんご一緒に釈尊の足跡を訪ねてみましょう。

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