お袈裟を縫う(糸賀梅花主事)

こちら日本国内外で未だ猛威をふるっているコロナウィルスでありますが、

ようやくワクチンが国内に入ってきて接種が始まってはいるものの…さて私共に接種の機会が来るのはいつ頃のことだろうと思っている今日この頃ではありますが…

前回は体を動かす為に卓球を再開したお話でしたが、期を同じく再開したことがあります。それは裁縫…というかお袈裟を縫うことを再開致しました。今までに私共曹洞宗の宗侶が首から下げている絡子(らくす)(五条衣・安陀衣とも言う)は幾つか縫って参りましたので、今回からはお袈裟を縫っております。

月に一日、日時や会場のお寺を決め、空いた時間に集合して思い思いに絡子や袈裟を縫う訳なんですが…お袈裟の裁縫が始まる前には、線香を立て、礼拝し『法衣十勝利』というお経を参加者で読んでから裁縫を開始します。時間が許される範囲で参加の皆様は一針一針手縫いで布を繋いで行くのですが裁縫の上手下手は関係なく先達のご指導を受けながら一心に行じております。時間内で作業途中の場合は持ち帰って次回までの宿題として次のステップまで仕上げて次の会に参加されている方もいらっしゃいます。

お袈裟というのは法衣店に頼んで出来上がったモノを購入して身に着けている。という方が実際は多いのですが、自分で選んで用いた衣材で自分が一針一針多くの時間を掛けて縫うことにより、そのお袈裟に愛着を感じれますし、より大切に扱えるのではないでしょうか。実際大切に扱わねばならない物ですが…

さて、お袈裟とは何ぞやという話ですが… 仏教書によりますと

袈裟(けさ)とは仏教の僧侶が身につける布状の衣装のことである。梵語で「壊色・混濁色」を意味するカーシャーヤ を音訳したもの。糞掃衣(ふんぞうえ)、福田衣(ふくでんね)、法衣(ほうえ)ともいう。

歴史
起源は、インドの仏教僧侶が身にまとっていた布。仏教では本来、出家僧侶は財産になるような私有物を持つことを禁じられており衣服も例外ではなかった。そのため価値や使い道が無くなり捨てられたぼろ布、死体置き場におかれた死者の衣服、汚物を拭う(=糞掃)くらいしか用の無くなった端布を拾い集め綴り合せて身を覆う布を作った。布は在家者(白い布をまとっていた)と区別するために草木や金属の錆を使って染め直され(染壊)、黄土色や青黒色をしていた。梵語の名前はこの色(壊色(えじき))に由来する。下着にあたる安陀会(あんだえ、サンスクリット: 、五条)、普段着にあたる鬱多羅僧(うったらそう、サンスクリット:、七条)、儀式・訪問着にあたる僧伽梨(そうぎゃり、サンスクリット: 、九条から二十五条)の3枚がある。これに食事や托鉢に使う持鉢をあわせて三衣一鉢(さんねいっぱつ)と呼び、僧侶の必需品とされた。

仏教がより寒冷な地方に伝播するにつれて下衣が着られるようになり、中国に伝わる頃には本来の用途を失って僧侶であることを表す装飾的な衣装となった。日本に伝わってからはさらに様々な色や金襴の布地が用いられるようになり、その組み合わせによって僧侶の位階や特権を表すものになった。特に江戸時代までは「紫衣(しえ)」、「紫袈裟」は天皇の勅許が必要であった。なお、一般の僧は黒い衣であったことから「黒衣」(こくえ)と称された。

形態
古くは両肩を含め全身を覆うように着用したが、現在では特別な場合を除き右肩を出すようにして掛ける(=偏袒右肩(へんだんうけん))。これは如来が両肩を覆って着用している(=通肩(つうけん))のに対して、仏への崇拝と畏敬の念を表すためである。インドでは尊敬する人物の前では敵意が無い事を示すために右肩を出す事が通例であった。

宗派や用途によって形状に多くのバリエーションがあるが、小さく裁断した布を縫い合わせて作られる基本的な縫製法は共通している。小さな布を縦に繋いだものを条(じょう)と呼び、これを横に何条か縫い合わせて作られる。条の数は一般には五条、七条(しちじょう)、九条(くじょう)の3種類であり、条数の多い方が尊重される。古い時代の袈裟には十五条、二十三条なども見られる。

縫い合わされた布が水田のように見えることから、袈裟を福田衣と呼ぶことがある。一説には釈迦に帰依した舎衛国の波斯匿王が仏弟子とバラモン僧を見まちがえて礼拝したため区別できるよう衣装の定めを設けるよう願った際、釈迦が傍らの阿難尊者に水田を指差して「あのようにすればよいだろう」と言われたことに由来するという。また、善行の種をまいて功徳を得るとする福田思想に由来するともいう。

禅宗では袈裟は嗣法(釈迦以来の仏法が師匠から弟子に正しく伝えられること)の重要な証である。師匠は弟子の修行が十分に達成されたと判断した時、仏法の核心を伝授しその証として祖師伝来の袈裟と持鉢を与える。「衣鉢を継ぐ」という言葉はこれに由来している。

一部の宗派では輪袈裟という簡易型の袈裟を僧侶の他、在家信徒も法会参列時に使用する。

改めて申しますが…

お袈裟はお釈迦さまから代々伝わってきた、仏教修行者の 証 となる服装です。お釈迦さまの時代には、使わなくなって捨てられた布など、人々が執着していない布を縫い合わせて作られました。お袈裟は執着を離れるという象徴なのです。現在では 絹や麻 など様々な材料が用いられていますが、たくさんの布を縫い合わせて作られています。お袈裟の持つ意味合いは変わっていないのです。ではこのお袈裟にはどんな意味があるのでしょう。お袈裟は、それを身につけることで、お釈迦さまの弟子であることを証明するとともに、身につければたいへんな功徳があると言われます。それはこのお袈裟がお釈迦さまをはじめ代々の修行者が身に着けてきたものであり、その姿を見た人々はその人をお釈迦さまの弟子として敬ってきたからなのです。

このように大変な功徳のあるお袈裟です。僧侶や修行者だけでなく、一般の方も身に着けられる輪袈裟や絡子など簡略なお袈裟もございますので、坐禅の時や法要に参加する際に身に着けてみませんか。


(梅花主事 糸賀一峰)

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