瑞應寺 臘八摂心に随喜(糸賀梅花主事)

瑞應寺 臘八摂心に随喜

 毎年、宗門の修行道場では12月1日から8日の早朝にかけて臘八摂心と呼ばれる坐禅三昧の行持が行われています。『臘』の字は12月を臘月(ろうげつ)と呼ぶことから、『八』の字は八日間を指し、『摂心』は「摂心」というのは「心をおさめる」ことで、つまりは坐禅のことを指すのですが、特に一日中坐禅することを指します。臘八摂心は特に、12月8日に仏道を成就されたお釈迦さまの坐禅を追慕する期間として行われます。普段、忙しくて、なかなか坐禅修行ができないという人であっても、この時期には諸々の仕事を止めて静かに坐っているはずです。この修行は大本山總持寺御開山・太祖瑩山禅師さまの頃から行われています。

 戦国時代には、現在のように12月1日から行われる修行となり、更に昼間も続けて坐禅を行うようになりました。1日7~14炷(1炷は約40分)程度坐る場合があります。朝起きて夜寝るまで坐禅です。臘八摂心はこれを一週間続けるのです。
そして、12月8日を迎えますと、三仏忌(お釈迦さまに因む3つの法要)の1つである「成道会(じょうどうえ)」になります。お釈迦さまが12月8日の朝、明星を見て仏道を成就された故事を讃え、我々も同じように仏道を成就することを願って法要が行われます。

 と、長々とご説明しておりますが、私も普段は諸事多繁を理由に中々坐禅をする時間が取れていません。取れても短い時間しか坐われていないのが実状です。世の禅宗のお坊さんであれば朝に晩に座っていらっしゃるかもしれませんが…

 ということもあってかれこれ5~6年前から安居(修行)でお世話になった修行道場であります四国愛媛県新居浜市の瑞應寺専門僧堂に12月になると随喜させて頂いております。とはいえ、当宗務所にも出所せねばなりませんし、地元の行事などもこの時期にあったりするため8日間全日の参加は難しく2~3日お世話になるのが関の山ですが、年に一度はお邪魔するようにしております。

 ここ瑞應寺では12月のこの時期になりますと元安居者(いわゆるOB)が8日間の間に入れ替わり立ち替わりでやってきて各自坐禅していきます。私もその内の一人なのですが、今年も摂心途中より四国に入りました。例年のことですが上山しますと急に気持ちが引き締まります。当時ご指導?頂いた先輩方と顔を合わせたり、同安居とも顔を合わせたり、懐かしい僧堂の空気に触れるからと思うのですが…実際に坐り始めるとこれが結構にしんどいというか、体が長時間の坐禅に慣れていないので足も背中も痛いわ、僧堂内での動きや食事の作法も思い出しながらですので、坐り始めて暫くは集中が出来てない始末で…

 おまけに日常と生活時間帯が異なり朝?は3時前起きで、夜は9時以降就寝ということで坐禅中は眠気との戦いとなるのですが、ようやく慣れて、坐禅に集中出来るようになる頃には帰らねばならない。という毎年でございます。

 とはいえ、足が痛い・背中が痛い思いをしてまで毎年恒例のこの行持に参加するのは自坊で私一人で坐れる自信が無い・行けば他の仲間がいるから何とか坐れるというのもありますが、個人的には心の洗濯と申しますか…初心に戻るといいますか…ここ瑞應寺に来ていると日常の煩わしさから解放され、ただ坐わり、行持するという贅沢な時間が味わえます。坐っていれば色々考え事もついしてしまいますが、有り難い時間を毎年過ごさせて頂いています。自坊へ帰る頃には、新たな気持ち?更なる気持ち?で、また一年頑張って行こう!という気にさせて貰えているからかと思います。

 こうやって、毎年のように12月の忙しい時期に四国まで行かせて頂けるのも山内の理解と協力があってのことですし、昨今の少子化で雲衲(雲水)さんの人数も私が安居していた頃より少ないにも関わらずこうやってこの時期に入れ替わり立ち替わりやってくる元安居者(OB)他を受け入れて下さる瑞應寺さんにも感謝せねばなりません。有り難いことです。そう思うと感謝の念をもって坐禅もせねばと思う今日この頃でございます。

 皆様は12月のこの時期は坐禅に親しんでいらっしゃいますか?そうでないというお方は来年辺りから如何でしょうか?

(梅花主事 糸賀一峰)

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