梅花ウツギ(人権主事)

 

 宗務所職員として、静岡での梅花流全国奉詠大会で代表登壇された島2宗務所管内の皆さまのお手伝いが適いますよう、一行へ加わらせて頂きました。梅花流に疎いまま、取組みも怠っています私には、本年も後ろめたく肩身の狭い行程でしたが、高速道路を走る車窓から見渡す新緑と、そのなかに印象的に浮かぶ白い花たちには癒されて、肩身の狭さを忘れ、心地よささえ覚えるバスの旅でした。

 5月下旬ですから、白いのは、ヤマボウシ、ウツギ、ミズキ、クリ、スイカズラ、そして、花ではありませんが、白い葉っぱはマタタビやハンゲショウたちだったのでしょうか。ウツギにはタニウツギやハコネウツギと思しき彩も眺められ、心地が潤い膨らんで、草薙の会場へ入りますと、5部に大別された大会次第に居住まいを委ねました。

 

 そのような私ゆえ、梅花流と向き合いお唱えするという本来あるべき心構えからすれば不謹慎な、観て聴くだけの大会参加だったことに、弁解の余地など見当たりません。さはさりながら、観て、聴くだけというありように一筋の道も開かれていないのでしょうか。

 嘗て、唄い唱えることに苦痛の無かった私でしたが、五十代中盤から喉の筋肉の変調に見舞われました。喉ちんこ(これも不謹慎なら、喉彦(のどひこ)、上舌(うわした)、又は喉仏(のどぼとけ)の筋肉、医学的には口蓋垂(こうがいすい))が弾力性を失ったとの診たてでした。加えて、その後に患った変形性頸椎症(腕や脚の脱力・痺れ等)のため鈴鉦も捌き辛いのです。高齢者で、梅花流と隔たりを感ずる方があるとすれば、私と同類の仲間も少なくないと思いますが、こうした場合、観て聴くだけの梅花流とのご縁を認め合えないものでしょうか。

 

 確かに、奉詠大会では、今回に限らず、登壇奉詠は、開催関係者のお世話が行き届いていることもあって淡々と進みます。一方で、登壇前後の奉詠者の皆さんが、客席等で登壇奉詠中の御詠歌・御和讃と静かに向き合い、聴き、ご覧になるといった、檀上との一体感を乏しく感じるのは私だけだったのでしょうか。国立劇場や国立文楽劇場での声明は論外として、今回で申せば、オープニング/ブルース・ヒューバナーさんの尺八演奏や、清興/駒澤大学吹奏楽部による音返し(おんがえし)演奏のときに溢れた、舞台と客席との一体感とまでは申しませんが、淡々と進行し過ぎるようにも思えます。唱えてこそ梅花流だから、それで好いのかも知れませんが。

 

 思いますに、唱えようにも唱え辛い方がいるのは異常ではありません。そうした方たちが梅花流と向き合うことがあっても、それも梅花流の意義につながるのではないでしょうか。それにつけて更に思いますのが、TV等で紹介された、聴覚障がいのある方とオーケストラの出合いです。メディアアーティスト落合陽一さんが、音を振動に替えて(耳が聞こえない人に)音楽体験できるプロジェクトを開発・・特殊なジャケットを身に着けることにより、聴覚障がいの方も身体中に音響が響く・・実際に日本フィルハーモニーオーケストラの演奏を聴覚障がい者が楽しんだのです。耳の聴こえにかかわらず、音響はそれぞれの人の心にあるとする想いを、コンサートで実現したというのです。

 本年度の人権擁護推進に係る、宗門の組織的取組みの課題は、ご存知のとおり『障害者差別解消法』を学び、同法に沿って現場で合理的に配慮できる具体策を実践することです。その展開の拡がりの先に、西洋音楽と同一に論ずることは不謹慎の上塗りだとのそしりを恐れずに申せば、梅花流を聴覚障がい者に感じて頂くことにまで思いが巡ります。

 そこまでは、概ね手前味噌かも知れませんが、少なくとも、梅花流との向き合い方として、唱えることだけではなく、幅広さを容認し試みては如何でしょうか。そのような視点から、この秋に予定されています『法話とご詠歌の会』に、その幅の膨らみを見出せそうな気も致します。唱え辛い方々でも静かにご詠歌と法話とに向き合い、仏のみ教えを感じ、気づき、安らぎのときを過ごせそうに思うからです。

 

 今回最後の不謹慎は、旅の一行が帰途に就く処で離脱させて頂いたことです。旧知と再会するためでした。自宅を訪ねて鉢植えの梅花ウツギに迎えられ、感動を覚えました。

 

 

                  

【参考】 ご詠歌とご法話のひととき  まします

       布教師・詠讃司 曹洞宗特派布教師・野津雅史師(出雲市 常光寺住職) 

                      梅花流特派師範・水島博恭師(神奈川県 珠泉院住職)

                                  河合俊英師(愛知県 正福寺副住職)

        出雲会場 10月21日 高野寺 出雲市東園町 開演13時30分

        松江会場 10月23日 桐岳寺 松江市奥谷町 開演10時

                   お問合わせ/曹洞宗島根県第二宗務所(0852‐31‐7022)

                   人権主事 山口完爾

ページトップに戻る