草抜き三昧(副所長)

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 暖かくなって来て、周囲の山の色が日々変化し油絵のようにとても美しく感じられるこの頃ですが、境内は雑草の季節です。普段は気がつかなかったような草がしっかりと根を張り、小さな花がついたり実がついたりしています。朝の作務は、当分この草たちを一本ずつ丁寧に抜くことになります。しかし、抜けども抜けどもいくらでも芽を出し、雨でも降ればあざ笑うかのごとく勢いづいて来ます。まさに煩悩のようであります。私の懸命な草抜きといっても地球のほんの片隅をなでているに過ぎず終わりなき戦いであります。

 でも結構楽しいものです。だれにもじゃまされることのない私の時間が流れます。鳥の声や電車の音、車の走る音もなんだか新鮮です。この世界を独占しているような気分で自然に手を動かしています。突然頭の中にいいアイデアが浮かぶこともあります。

 子供の頃「草を取れ」と教えられたことが今ではとてもありがたく、ようやく少し理解できるような気がして来ました。

 6時過ぎです。カタコトと音がし始めました。お墓参りの方が門の横で水をくむ音です。「おはようございます」と交わす挨拶は、なんとも気持ちがいい。もう忙しい一日がはじまりました。今日はどんな人との出会いがあるのだろうか楽しみでもあります。(副所長 楫野光範)

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