庫裏の庭先に蝋梅がありますが、1月から3月初めにかけて、まるで蝋細工のような黄色い花が咲きます。
5年くらい前に近所のMさんが「うちに蝋梅がありますから、ここに植えましょう」と持って来て植えて下さったものです。今は背丈ほどに伸びて塀の外の道を歩く人にも見えるようになりました。Mさんは7年間病と闘って来られたのですが今年1月8日に亡くなりました。ちょうど咲き始めた蝋梅が別れを知らせているようでなんとも寂しい思いでありました。
Mさんは、いろいろ好きな花を育てておられ、ヤマボウシ、鶏頭、藤袴、紫陽花、ホタルブクロ、などなど「生けて下さいね」といつも頂戴しました。さりげなく花瓶に生けた花を参拝の方が「いいね、きれいですね」と心を和まして下いました。山門横の水子地蔵さんにも絶やさず、きれいな花を飾っていただきました。その楽しそうな姿を忘れることは出来ません。これこそ、お参りされる皆さんを喜ばせる利他行の実践者であったと思います。
この季節には、よく「好きでしょう」と甘酒をいただきました。入れものはペットボトル。まわりにピンク色の和紙を巻いて赤い紐で結び、いかにもおいしそうでした。心細かく親切が伝わる方でした。
梅花講員でもあり書道にもすぐれ、教わることがたくさんありました。
蝋梅は、庭木として日々成長しています。もう花は終わり、新しい芽が伸びだしました。来年はもっとたくさんの花が咲くことでしょう。
花言葉は「慈愛」であり、寺院にもふさわしい花であります。大切に育てたいと思っています。
人去りて蝋梅の香ひそかなり
(副所長 楫野光範)