今年の5月のことでした。私の恩師にあたるお寺さんから朝日新聞に毎日掲載されていた大岡信さんの「折々のうた」をまとめた本をおすすめされました。早速探してみると何冊かあったので、まずは1冊購入してみました。読んでおりますとこれからお盆を迎えるにあたって印象に残ったうたがありました。
足折るな夫(つま)のくにまで茄子馬(なすびうま)
皆さんもお盆にきゅうり・なすで精霊馬を作られると思います。このうたを詠んだ作者は、つれあいに先立たれた由。盆送りの時に無事にあちらの世界につくまで、「足よ折れるなよ」という願いを込めたうたとのこと。
生前の仲睦まじい様子を感じたり、大変思いやりのある心温まる願いが込められたうただと感じ、大変印象に残りました。
また数年前とあるお宅の棚経にお邪魔した時、こんな経験をしました。お経を読んでおりますと、小さなおもちゃの車がお位牌の近くにおいてあるのが目に留まりました。お経が終わったあと、気になったものですから、尋ねてみました。すると
「うちの孫がね、おじいちゃんに早く帰って来て欲しいから、車をお供えしたのです」
理由を聞いて、ほのぼのとしました。基本は知りつつも必ずしもきゅうり・なすにこだわることなく、お孫さんの想いを大事にしたお供え、心が温まるお盆の思い出として今でも心に残っています。
今年もコロナ禍で迎えるお盆。制約の多い毎日ではありますが、心はしっかりとつなげて参りたいと思います。
(人権擁護推進主事 西古孝志)