『釈尊初転法輪の地サルナート/バラナシ(ベナレス)』~Buddhist Circuit Trainの旅~(堀江副所長)

前回の続き!

 Buddhist Circuit Train(仏教徒の為の仏跡周遊列車)も3日目ガヤ駅を深夜(午後11時)に出発して西方約250Kmの次の予定地バラナシ/ワーラーナシー(旧ベナレス)に向かいました。ところが、ツアー日程にはバラナシ着が午前7時で車内で朝食後にサルナート(釈尊初転法輪の地)に向かう予定となっていました。

 ガヤからバラナシは西方約250Km

 しかし、ガヤからバラナシまで約250㎞を列車での所要時間が何と約8時間!この区間は本線でもあり飛ばせば約4時間でも十分なはずです。続行列車もあり徐行運転は不可能ですのでどうもおかしいと思い納得が出来ませんでした。主催者であるIRC(インド国鉄)の担当者に問い合わせをした処、その運行時間のカラクリ(?)が判明しました。ガヤからバラナシは通常通り突っ走って約4時間、バラナシの少し手前の駅には午前3時頃に到着してその駅で約4時間の時間調整(停車)をする事が解りました。途中で列車の時間調整ができるのは貸し切り列車ならではの事です。

 そこでインドへ行ったら是非バラナシで経験したいヒンドゥー教とガンガー(ガンジス河)との繋がりを是非体験したくなり、本体のツアー日程には無かったオプショナルツアーを計画しました。午前4時頃に時間調整(停車中)をしている駅に車を用意してもらい食堂車で朝食用のランチボックスを作ってもらい、一時本体とは別行動をしてガンズス河の日の出とヒンドゥー教徒の朝の沐浴風景を見に行く事にしました。

 車で約30分ガンガーを渡って街の路地奥まで案内されました。「道が狭いので車はここまてです。後は歩いて下さい!」との事で狭い路地裏を約10分ほど歩くとガンガーのほとりに出ました。夜明け前のガンガーのほとりにはすでに多くのヒンドゥー教徒が集まり沐浴をしていました。南国インドとは言え1月末の夜明け前は寒く、ほとりのガート(階段状になった川辺)に座ってテークアウトのインドチャイ屋さんからインドチャイを買って冷えた体を温めながら夜明けを待つ事にしました。

 バラナシはガンジス河(ガンガー)のほとりにあり紀元前三世紀頃初めてインドを統一したマウリヤ朝の首都でもあり、ヒンドゥー教の聖地でもあります。ヒンドゥー教では河川崇拝が顕著で、ガンジス河の水を使った沐浴の儀式が重要視されています。おせいじにも綺麗とは言いづらいですがガンジス河も水もヒンドゥー教徒には聖なる水です。まだ、冷たい水に体を沈めて祈るヒンドゥー教徒の信仰心には驚きです。

 世界の三大宗教と言えば、キリスト教、イスラム教、仏教と教えられましたが、信者数から言えば、キリスト教が約20億人、イスラム教が約16億人、仏教が約4億人程度で、ヒンドゥー教が約11億人程度なので仏教徒よりも遙かに多いのですが ヒンドゥー教が三大宗教に入らない理由として、世界中に広がった世界宗教ではなくインド・アーリア語族系の民族宗教であることが考えられると思います。


ヒンドゥー教徒の沐浴風景

 午前中は本体と分かれて全くの自由行動となりますので、鉄チャンの虫が沸いて来ましたので近くの駅でインド鉄道の写真でも撮る事にしました。近くの駅でカメラを構えていると、駅員が飛んで来て「鉄道の写真は撮影は禁止だ!」とばかりに制止をされました。そう何です!インドでは鉄道は準軍事施設となりますので基本的に撮影禁止となります。しかし、中国のように公安に拘束され散々身元調査をされたりカメラからフイルムを抜かれたりはしません。「ごめんなさい!こめんなさい!」とばかりに手を合わせてその場をおとなしく立ち去れば何事にもなりません。駅員も「あっちの方なら見つからないから大丈夫だよ!」とばかりに指差しで案内してくれました。

本来は撮影禁止のインド鉄道(バラナシ近郊電車)


長距離列車(とになく長い、最低でも20両編成)

 線路際を少し歩いた後、いよいよ本日のメインイベントでもあるサルナートに向かいました。駅から車で約10分ほどの近距離でした。釈尊がお悟りになって、以前共に修行をしてきた五人の仲間(五比丘・ごびく)などに初めて仏教の教義(法輪)を人びとに説いた場所が、バラナシ(旧ベナレス)のサルナートです。サルナートは釈尊四大聖地でもあり、現在では巨大な仏塔や寺院跡が公園として保存されており、ヒンドゥー教徒の国家でも宗教を問わず多くの人が訪れています。地元の高校生が課外授業でしょうか沢山訪れていました。

サルナート巨大仏塔


釈尊初転法輪の地サルナート(バラナシ市内)

 また、近くには博物館があり、世界で最も美しいと言われる釈尊像やマウリヤ朝の漢訳音写では阿育王と書かれる第3代の王であるアショカ(アショーカ)王が仏教に帰依をして各地に建立した仏塔の頭に掲げられた4頭のライオン像なども展示されています。特に4頭のライオン像はインド国家の象徴として紙幣にも印刷されています。

最も美しいと言われる釈尊像


インドの象徴!4頭のライオン像

 お腹が空いて来たので博物館前の屋台の様な(汚い)店に入りました。が、メニューがすべてヒンディー語!スマホを見ながら適当に辛くなさそうな「ベジタリアンのミルクカリー」と「ナン」と「ラッシー」こうなれば一か八かです。ところが、出て来たカリーは日本人の口に合うとても美味しいカリーでした。個人的にはホテルのレストランより美味しかった!よく冗談に言われる言葉に「保健所が飛んで来そうな店(?)の方が美味しい!」

 お腹も満足した処で本体が休憩をしているホテルに戻る事にしました。今回のツアーでは夜行列車の翌日はホテルがデーユースになっており、日中にホテルの部屋を自由に使う事が出来るので洗濯や昼寝も自由です。

 夕方頃案内があり、ホテルの前にはオート・リクシャー(インド文化圏の軽便な三輪タクシー)が並んでおり、語源は人力車で現在はバッテリー交換式の電気式三輪車でガンジス河のほとりで行われる、ヒンドゥー教のお祭りアールティーブージャを見に行く事になりました。インドでは日本と同じ左側通行ですので運転も慣れれば大丈夫かと思いがちですが、まず、日本人にインドの街中の運転は無理でしょう。

ヒンドゥー教のお祭りアールティープージャの様子


河畔に点在する火葬場

 ガンジス河の河畔は道が狭く途中から徒歩になりましたが、人の多さは尋常ではありません。ここで迷子になれば大変な事です。アールティープージャのお祭りは船に乗って河から見る事になりました。

 お祭りの途中からガンジス河の夜の遊覧でした。日中は気が付きませんでしたが河畔に火葬場らしきところが幾つもありました。おそらく、近くからの写真撮影は禁止されていると思いますが、以前は遺体をそのままガンジス河に流したとも聞いていましたが現在ではそのような事はありません。至る所に火葬場の炎が24時間上がっているようです。

 今夜も夜行列車で明日はいよいよ生まれて初めて国境を自分の足で渡ります。インド最北端の駅から釈尊誕生の地ネパール領ルンビニーです。

次回に続く!

(副所長 堀江晴俊)

ページトップに戻る