ゴジラ-1.0 (森田書記)

山崎貴監督の映画、「ゴジラー1.0」が全米で大ヒットとなっています。

11月3日から日本国内で、12月1日からは全米で公開されております、日本では誰もが知るお馴染みの怪獣映画です。

2016年に公開され興収82.5億円を記録した、庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」の大ヒットもまだまだ記憶に新しいところ。本作は国内においては12月3日時点で38.2億円と健闘している模様です。

私が小さかった頃も、のちに「平成シリーズ」「ミレニアムシリーズ」と呼ばれる「ゴジラVS〇〇」が毎年のように公開されていて、そこまで熱心で無いにしろ、レンタルビデオを借りて見ていたのを覚えています。

 

知人の熱心なゴジラファンによればゴジラ映画は、「頭を使って見るゴジラ映画」と「頭からっぽで見られるゴジラ映画」の2つに大別されるそうで、今回の「ゴジラ-1.0」は前者であるとのこと。

このこともあって国内での評価は賛否両論といったところではありますが、ともかく全米では大好評。全米興収歴代邦画実写作品で第1位に輝きました。(ちなみに今までの1位は1986年公開の畑正憲(ムツゴロウさん)監督「子猫物語」だったそう。)

アメリカでの高評価の理由として、もちろんゴジラが大暴れするシーンの映像に関する評価もありますが、今作に関しては所謂“人間パート”に関する高評価が多い模様。

元特攻隊員でありながら戦争から逃げてきたトラウマを抱えながら、ゴジラという恐怖に立ち向かわなければならない主人公、敷島を演じた神木隆之介の演技もさることながら、主人公だけでなく、その周囲の人物たちも良いキャラクターで、観客に心から「無事で居てほしい」と思わせられるようなものとなっていたように思えました。モンスターパニック映画のキャラクターといえば、ストーリーの都合でおかしな行動をとったりするのが常ですが、そういうノイズがなかったのもよかったと思います。

 

日本において第二次世界大戦中・戦後という時代・舞台設定は、無数の創作物において取り扱われ、且つ日本人においては厳しいまなざしでもって評価されがちな設定です。

一方で日本人にとって戦争は遥か過去の出来事、対岸の火事となってしまっている一面もあります。小学校・中学校の教科書やドラマ・映画・ドキュメンタリー番組などで戦争の事を知識として知ってはいても、もう戦争体験を語る人が身近に居ることすらなくなりました。小学校で定番だった「誰かに戦争の話を聞いてくる」という宿題はもう成立しないそうです。

一方アメリカにおいては現代も戦争は日本よりもはるかに身近で、ベトナム帰還兵に端を発するPTSDの問題などは大きな社会問題となり今なお研究・治療が続けられる分野であります。

 

ここでSNSで少し話題になった「ゴジラ-1.0」の海外の感想を一つ取り上げます。

「映画館の座席で動かずにいることが困難だった。敷島の苦しみは自分と同じで震えを止められなかった。敷島が救われた時、自分も救われたと感じた。この映画は自分には特別になった」

日本人にはおそらく感じることが難しい、本当の恐怖と安堵が感じられるような気がします。

今年、第二宗務所で沖縄慰霊の旅ということで、ひめゆりの塔、平和記念資料館、平和記念公園を訪問し、数々の資料映像やインタビュー映像などを見て、戦争の悲しさ、惨さを改めて認識し、自分の中で何かが変わったような気がしていましたが、私とは映画との距離が全く違う、感じているものが違うということが短い文章からわかりました。

 

日本においては「シン・ゴジラ」の方は現代が舞台で身近な映画、「ゴジラ-1.0」はどちらかというと昔話的、“戦後”というジャンルに無意識に放り込んでしまう所から、「シン・ゴジラ」に比べて国内の人気が伸び悩んだ所もあるのでは、と思っています。

 

今年は戦中・戦後が舞台の映画が多く、「ゴジラ-1.0」、「君たちはどう生きるか」「あの花が咲く丘で君とまた出会えたら」「窓ぎわのトットちゃん」などが公開されました。やはり戦争に対する日本人の特別な感情がうかがえるような気がします。

さらに先ごろ、海外になりますがクリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」の2024年日本国内公開が決定しました。原爆を作った男“ロバート・オッペンハイマー”を描いた映画ということで、世界的にヒットしましたが、原爆の被害という点には触れていないなど日本での公開は無いかと思われていましたが、公開されるということで、個人的には来年最注目の映画となりました。

来年はオッペンハイマーの感想が書ければ良いかなと思います。

 

 

ちなみに私の今年見た映画No.1は、インドの「RRR」です。頭からっぽです。

書記 森田大裕

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