宗務所も新年度を迎えました。私の執務も実質2年度目です。
これまでの1年余は、私にとりまして戸惑いが多いなか、新たな出合いなどに恵まれ、学ばせて頂き、気づかせて頂いた、日日好日ならぬ日日更日でした。弁解無用と心得ますが、地域社会の変貌・変相はもとより、諸般の仕組みの変遷や実務処理技術の進化など、めまぐるしい時流に押し流されたり置去りにされる思いにも駆られました。
時流と向き合っているのは、宗務所も檀務も同じです。とはいえ、宗務所では時流に敏感でなければ執務が滞りますが、檀務では時流に遅れながら向き合うほうが檀家の方々に受け容れられ易いことも少なくありません。檀徒さんたちの中には、例えばパソコンやスマホアプリとは無縁にお過ごしのご年配たち、いわば時流とは距離のある方たちが少なくないからです。局面によってその方たちは時流弱者、情報弱者として取り残されていますから、その皆さんに寄り添うのも檀務としてはとても大切です。仏道では時流の外にあることを標榜する向きさえ認められると思います。
しかし、それだけでは混迷する世相などからの癒しを求める多くの人々に向き合い、次世代へつなぐ寺院運営は適いますまい。そのままでは、仏教の、または仏教者の社会的責務も充分には果たし得ないように思えます。そういった意識を喚起し、より広く、また先をも想いながら、しかし、時流弱者にも寄り添いながら、地場の淀みのなかに佇むことも忘れないように、宗務と檀務との両方を考えながら2年度目を執務したいと思います。
新たな出合いも楽しみです。(人権擁護推進主事 山口完爾)