「花まつり」(佐野書記)

 四月八日は、お釈迦さまのご生誕をお祝いする「降誕会(ごうたんえ)・花まつり」の日だ。私が住職をつとめる寺は、仁多郡奥出雲町八川(やかわ)にある。毎年、当山では、ひと月遅らせて五月の大型連休後の吉日に檀信徒の方々並びに八川幼児園の園児の皆さんをお招きして法要をおつとめしている。

 

 数年前の花まつり法要での出来事である。法要後に、園児の皆さんに花まつりの法話をした。「長いこと」を尊ぶ私は、法要後の話も長い。私の綿密かつ緻密な原稿では、「花」→「きれい」→「花供養の尊さ」というように話が展開されるはずであった。

 

 しかし、たとえ法話中であろうとも黙することを知らない恐るべき聴衆者たちは、私の「花はきれい?」という問い掛けに対して、「花はかれるけん、いやだ!」→「かれる?」「かれい?」→「カレー!」と軌道修正不可能な別世界へと旅立っていった…。

 無邪気でイタイケな子どもたちではあったが、私は内心、「八川チルドレンはあなどれん!」と強く感じた。

 

 次回こそは、予想外の展開にも対応できる原稿を作成するぞと意気込むとともに、「花まつり」も「カレー」もお釈迦さまが誕生された「インド」につながるので、今回の法話もあながち失敗ではなかったと自らを無理やり納得させた。

 

 今年もコロナ禍ではあるが、こぼっそらと法要をおつとめしようと思案中だ。

 

書記 佐野晃孝

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