先日法事の席で「私の家も、私の代で終わりですわ」と寂しそうに話される方があり「寺がある限り永代供養もできますから安心して下さい」と言ってもその気持ちを癒やすことができず、むなしさを感じてしまいました。
今、少子高齢化、人口の都市流出、農林業の不振などが後継者確保を難しくしています。また市街地や住宅地でも、次の代には、職場とともに別の地へ移り住む傾向にあり、高齢者世帯や空き屋が多くなって来ました。現在のような経済状況が続けば、この流れを止めることは困難だと思われます。
島根県の試算(10月2日付 山陰中央新報)では、県全体の人口減とともに中山間地の人口は、急速に減少し、2015年の305,000人が2030年には247,000人に2060年には177,000人になると予測されています。
また、島根県の世帯数26万1千(2010年)の内11.8%が高齢者夫婦世帯、10.4%が高齢者単身世帯であり、後継者の問題などから今後世帯数も減少して来ます。
こうした都市への人口流出と少子高齢化は、多くの寺院が檀家数の減少につながり経営にも大きく影響すると考えられます。
この問題は、本年度の宗務所の重点施策の中にもあげてありますが、なかなかの難問であります。
本年度の現職研修会では、この問題に関連する講座を寺院デザイン代表取締役の薄井秀夫先生にお願いしました。仏教を取り巻く問題を分析し、開かれた寺院、悲しみに寄り添い癒す役割、永代供養墓による新たな関係などの指導や提案をいただきました。この問題は、今後さらに研修を継続することが必要だと思います。
寺院にはそれぞれの歴史があり、規模も地域も様々です。切実感を持って現実をよく見ながらの対応が求められます。
今後は兼務寺院がもっと増加するかもしれません。あるいは、連携を持った寺院経営も出来るのかもしれません。もっといい方法があるのかもしれません。でも、住職や檀家の努力で建てられた大きな伽藍はどう守るのか、などと思いながら時が流れています。(副所長 楫野光範)