子供の頃によく聴いていた歌謡曲には、その歌詞が今の時代にはそぐわないものも多くあったように思います。歌謡曲は特に男女関係、恋愛について歌われていることが多いのですが、70年代から80年代にかけては、男性上位といえるものや今ではセクハラ認定されるようなものが多く、「男性の都合で女性を置いて去る」「男性が浮気を正当化しようとする」「女性は耐え忍び北へ向かう」などの唄がヒットしていました。
私の印象としては、80年代後半から海外の女性アーティストが強い個性を発揮して人気となった頃から雰囲気が変わったように思います。マドンナやシンディー・ローパー、アニー・レノックスなどは楽曲やパフォーマンスやファッションなど、特に多くの同性に影響を及ぼしました。日本の音楽界も同様に大きな影響を受け、ほぼそのままのような楽曲やファッションもありましたが、90年代には男性と女性の対等な恋愛観や社会における女性の立場や悩みを歌う曲が増えたように思います。「男性が好むかわいいアイドル」から「同性が憧れる女性アーティスト」が活躍するようになったのは90年代に入ってからかと思います。現在に至っては、それに加えて「同性が憧れるかわいいアイドル」が大きな人気を集めています。
振り返ってみると、70年代以降の女性の人権活動が世界に広がるのと合わせて、音楽を通じた女性の声が広がり、昭和の歌謡曲が化石のように思えるように時代が変わってきたように思います。この50年間を、私たちに届く音楽やパフォーマンスを通じて見ても、女性の立場の変化や活躍ぶりが変わってきたことは感じることができるのではないでしょうか。
人権主事 上野泰裕